第04話-4

「さぁ、参加者の行く手に待ちかまえるは第二の難関!!」


アリスの実況がうるさく聞こえてきたロディは、何回か中継シャトルを落とそうかとも考えたが・・さすがにレース実行委員会に楯突いては・・と思って断念する


・・ふん、今はレースに集中せねばな・・


すでに冷酷非情の悪役・・社長の顔も、多少アレな兄貴の顔も、正義の味方T.Cとしての顔も彼にはない

暴れて、暴れて、暴れまくる!

・・その事だけに固執した、破壊衝動の塊となっていた。


「死ねぇぇぇっ!!!」


叫ぶ・・・その声が聞こえるより早く、狙われていたギアの一機が真っ二つになり・・また花火のように宇宙に散った

・・残り50ってトコか・・ヘッ・・ようやく数も丁度よくなってきたなぁ?

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「いつものロディじゃない~(泣)」

「・・どうやら暴れるという本能のみで行動しているようですね・・」


そういえば、さっきからゼファーはサイシステムを全開状態のまま稼働している

全開状態・・それが現わす事は一つ、パイロットの精神力が浪費され続けているという事実だ


・・シュウが言うには、普通の人間では十分動かせれば上出来だという。

どう考えても三十分以上高速機動しているゼファー、そしてロディは何者か?


現在順位は1位ゼファー、2位がさっきのシガラキのギア、3位はガタイのいい、大型の作業用ギア・・

デストロイはドーマと共に、後衛に回っていた(メイが怖がるため)


・・その間にも第二の難関・・トラップ二つ目は目と鼻の先に見えてくる・・


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「誰かお兄ちゃんを止めてぇぇ~!!恥ずかしいよぅ~!!(泣)」


衛星港で待つブレードバッシャーのブリッジでは・・セラが実況中継を見て、顔を真っ赤にして泣きわめいていた

兄があんな横暴をさらせば、当然妹がどう見られるか・・


「お、落ち着いてくださいセラ様ぁ・・」

「う~・・だって、だって・・・お兄ちゃんがニュース沙汰起こすと毎回毎回パン屋のおばさんに言われるし、街で私の事見て笑う人がいるし・・・」


ネスは黙りこくってしまい、次に言う言葉が浮かんでこなかった

・・その時、セラの泣き顔が一瞬だけ固まる


「・・ネスちゃん、「メイオウ」って飛距離どのくらい?」

「あー!!それだけは撃っちゃだめですっ!!!いーですか!?絶対そういう考え方だけはしてはいけませんよっ!?」


ネスの慌てようにはワケがある・・

先にシュウが寝ぼけて撃とうとしたブレードバッシャーの艦首主砲「メイオウ」

これは・・威力がとにかく派手なのだ


ちなみに今まで、一度も撃たれた事はない

・・作ったシュウ自身、コレに関しては一切を語ろうともしなかった

・・じゃ、何のための主砲なのだろうか・・(汗)


ネスは兄を討とうとするセラを思いとどまらせると、暴れ回るゼファーを見て・・

また、これで何十回目かわからないため息をついた。

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そのころの地球では・・


西安支部

・・ラウンジには夏場ということもあって、涼しい空気が立ち込めている

エアコンの効いた部屋、扇風機の前で・・・

制服ほっぽりだしてインナーにズボンというラフなカッコで強風に当たっているのはラルフだ。


「あ~・・・・・・すずし~・・・・・・・」


汗だくの彼は最高の気分・・

リィズの元から逃げ出し、先ほどまで整備班と一緒に愛機の整備をしていた・・まぁ要は30度以上の場所にいたのだ

・・今まさに彼は天国を味わっていることだろう・・


・・数分後、地獄が・・地獄からお迎えが来ることなどは知らずに・・


「ラルフ、あんたここで何してんの?」

「あ、隊長・・・いやね、ちょっと相棒の整備をし・・」

あんなポンコツの整備する暇があるなら始末書書き手伝いなさい!・・ちなみに残り50枚、私と新入り連中とあんたで・・一人当たり十枚。」

「・・・・・・」


汗だくの彼の顔に、別な汗が流れる・・涙だ。

愛機はコケにされ、夏休みの宿題、感想文のような課題は追加され・・


・・・「今日はついてない」・・ラルフは心底そう思っていた。

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アリスの言っていた「第二の難関」らしきものが見えてきた

・・何十機ものギアが行く手に立ちふさがっている


全て、黒いカラーリングで統一され・・あたかも敵である事を誇示しているかのようだ

当然というか、何というか・・今まで横暴を繰り返していたゼファーを危険と見なして真っ先に突っ込んでくる


「パターンだ!!」


突っ込んでくる軌道は同じ・・ロディは一瞬でそれを読み、その「先」を行く

しかし・・敵は異様なまでに速い!


ゼファーは足を掴まれ、がくん、と体勢を崩してしまう


・・何ィっ!?


「野郎ッ!!」


ゼファーの右手が動いた

足を掴んでいる黒いギアの頭めがけて・・レーザーブレードが伸縮する

・・当然のようにギアの頭は吹き飛び、リモートコントロールらしいその機体は動きを停止した


「邪魔するンなら本気でかかっていいんだよなぁ?・・・シュウ!アレだ!!」


ロディはナビに向かって叫ぶ

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・・そのころシュウは、ブレードバッシャーのブリッジでネットワーク作業の続きをしていた


「あい、了解。」


何をどうするという事も聞かず、シュウは作業中の手から・・ぽん、とキーの一つを叩いた

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「来たか!!」


ロディは数秒の間の後、待ちかねたようにゼファーを制止させた

機体の後方の空間が歪み・・ワームドライブを使用して、一機の正三角形の戦闘機が飛んできた

ゼファーの背中にジョイントすると、先端に飛び出したブースターが二つに割れて機体の両脚部に装着された


これでゼファーの両腕には氷嵐焼尽弾のパーツ、脚部には大出力のブースター、背部にも多機能の「シールド」が装備された事になる


「合体完了!ゼファー・パーフェクトモード!!」


某ヒーローのようなポーズを決めて、ゼファーがきぃぃぃ・・と吼える

左手から乱雑に作り出した氷塊、右手から超高熱波・・

さらに元からついている右腕のレーザー・ブレードと左腕のアーカム・ストライク

背部のシールドにはまだまだ、リボルバー、ショットガンなど数々の武装が隠されている


・・この「パーフェクトモード」は、要はロディの上着をゼファーに着せたようなものなのだ。


「ブーストバルブ解放!氷嵐焼尽弾無差別モード!!!」


無差別・・とついたのは、「黒い障害物ギア」と「参加者」を区別しない、という意味だ。

全ての敵が、ロディにとっての全ての敵が・・突如として発生した氷塊と熱波の嵐に飲み込まれていく


「で・・デストロイの装甲が!?」


ガンマが驚愕したのも無理はない

相干渉フィールドによって打ち消され、完全防備のハズのデストロイ・・その装甲温度が、上昇し始めたのだから


・・さすがに装甲の破壊までには至らないものの、デストロイは熱いらしくぎゃーぎゃーと吼えている


「だ、大丈夫ガンマぁ・・・?」

「デストロイ、どうですか?」


・・グォォォ・・・・ッ!!


「いけませんよ、ゼファーを攻撃しては・・(汗)」


・・どうやらお怒りの様子だ

「マスター!いつまで攻撃してるつもりなんですかっ!?レースはどうしたんですレースは!?」

「・・ん?・・・・そーいえばコレって・・・ああ、そーいやレースだよな?」


今更のように我に返ったロディ

ゼファーは突然ぴた、と回転を止めると・・背部のバーニアと肩部のバーニア、脚部のブースターをフル稼働する


・・音速を超えた

一瞬にして姿の見えなくなる機体・・


「コレでいいんだろ?」


ゼファーは一直線にコースを突き進む・・!


宇宙を縦断するこのレース、しかし明確なコース指定はされていないため、実質自由にルート選択ができる

・・だが・・当然、どこへ行こうと難関は待ちかまえている


「かかってこいよ・・全部真っ二つにしてやるぜぇ!!


ロディが気合いを入れ直すと、ゼファーが大きくきぃぃぃ・・・と吼えた

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・・似ているな。


ゼオは何年も昔・・いや、何十年も昔だろうか、その時を思い出して微笑んだ


・・俺も、シュテルをあーいう風にかっとばしたっけなぁ・・


手にしたキーをくるくると回しながら、ゼオは感慨深げにロディの大暴走を見守っていた


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